支援は「モノ」から「コト」へ。|一人ひとりに寄り添う支援を届けた「S-MAT」の記録

支援は「モノ」から「コト」へ。|一人ひとりに寄り添う支援を届けた「S-MAT」の記録

令和8年熊本地震の発生直後、桜十字グループでは、被災した職員や地域を支えるため、各拠点が連携しながら迅速に支援を開始しました。発災直後に必要だったのは、水や食料、簡易トイレなど、命と暮らしを守るための「モノ」の支援。しかし、時間の経過とともに、必要とされる支援は、一人ひとりの生活に寄り添う「コト」の支援へと変化していきました。

その変化に対応するために生まれたのが、「S-MAT(桜十字 寄り添い支援隊)」です。
S-MATは、一方的に制度や仕組みを紹介する取り組みではありません。困っている仲間の声を受け止め、「今、本当に必要な支援は何か」を考え、グループ全体で支え合うために生まれた取り組みです。

今回は、発災から支援がどのように広がり、S-MATが生まれたのか、その歩みをご紹介します。

グループ各地から、支援の輪が広がる

発災直後、各地で施設内の安全確認と並行して、被災地への支援準備が始まりました。

熊本県央、大分、南九州などではそれぞれの地域で被災状況や必要な支援について情報を集め、「今、自分たちにできること」を考えながら行動。物資を集めて届ける拠点もあれば、現地の状況を確認し、次の支援につなげる拠点もありました。

南九州エリアでは、翌29日に「南九州災害対応チーム」が結成され、物資の調達や現地への搬送を開始。現地で得た情報をもとに、衣類やタオル、ドライシャンプーなど、避難生活に必要な生活用品を追加で届けました。

それぞれの場所で、それぞれの立場から始まった支援が、少しずつつながり、グループ全体の支援の輪へと広がっていきました。

発災直後、最初に動いたのは「人」でした

そして、今回S-MAT発足を主導した福岡桜十字では、
「まずは動こう。」

責任者のその一言をきっかけに、職員は福岡市中へ向かい、簡易トイレや飲料水、食料などの物資を買い集めました。翌日には、備蓄品とともに支援物資を積み込んだ第1便が熊本へ向けて出発。さらに、7月30日には「被災地へ食事を届けたい」という呼びかけに、多くの職員が応え、わずか1時間で867個のおにぎりやパンが集まりました。

役割分担や経費精算のルールなど制度が整う前に、「今、自分にできること」を考え、一人ひとりが行動したこと。それが桜十字グループの支援の原点でした。


支援は「モノ」から「コト」へ

数日が経つと、水や食料などの物資は少しずつ行き渡るようになりました。一方で、被災した職員から寄せられる相談は変化していきます。

「家具を運び出してほしい。」
「引っ越しを手伝ってほしい。」
「子どもの預け先が見つからない。」
「住宅ローンや生活再建への不安がある。」

同じ地震を経験していても、困っていることは一人ひとり違います。必要だったのは、全員に同じ支援を届けることではなく、それぞれの状況に応じた支援を届けることでした。しかし、現場の状況は常に移り変わるもの。毎日被災地に向かい「何をしたらいいですか?」と現場責任者へ指示を仰ぐことも一つの手段ですが、その前に被災地域以外の桜十字スタッフだからこそ「できること」があるのではないか、と考えました。

一人ひとりの声を支援へつなぐ「S-MAT」

こうして立ち上がったのが、「桜十字 寄り添い支援隊(S-MAT)」です。

S-MATは、一人ひとりの困りごとに寄り添い、必要な支援へつなぐために生まれた取り組みです。寄せられた声をグループ全体で共有し、拠点や部署の垣根を越えて連携しながら、一人ひとりの状況に応じた支援を届けました。

さらに、現場の声を迅速に支援へつなげるため、職員が応援スタッフの募集フォームや寄り添い支援隊窓口、災害見舞金の申請フォームなどを短期間で整備。現場で必要な仕組みを、その場でかたちにしていきました。

現場で寄り添う支援へ

8月3日からは応援チームが現地入りし、S-MATで集約した要望をもとに、家屋の片付けや災害ごみの搬出、託児所の運営、物資の仕分けなど、一人ひとりの生活再建を支える活動を行いました。現場では役割を分担しながら柔軟に対応し、必要な支援を届け続けました。

支援に向かった職員からは、「支えるために来たつもりだったが、前向きに働く現地スタッフの姿に、逆に力をもらった」という声も聞かれました。

S-MATとは、みんなのこと

S-MATという名前が付いたのは、支援活動が始まってからのことでした。しかし、その想いは発災直後から続いていた支援活動そのものにあります。

物資を買い集めた人、現地へ届けた人、困りごとの声を受け止めた人、現場で支援にあたった人、情報を発信した人、募金を呼びかけた人。それぞれが自分の立場で「今、自分にできること」を考え、行動していました。

S-MATは一部のメンバーだけを指す名前ではありません。

「置かれた立場の中で、自分にできることを考え、行動する。そんな桜十字スタッフ一人ひとり」がS-MATの一員です。

災害は、いつ、どこで起こるか分からない。だからこそ、今回の取り組みは、被災した職員を支えるだけでなく、「困ったときは一人にしない」「被害に遭った人ほど『手伝って』と言いにくいはず。そんなときだからこそ、こちらからおせっかいを焼きに行く」という桜十字グループの文化をかたちにしたものでもありました。

これから先、どこかの拠点で同じような災害が起きたとしても、一人で抱え込む必要はありません。誰かが声を受け止め、誰かがその声に応え、グループ全体で支えていく。その支え合いの文化を、これからも私たち一人ひとりがつないでいきます。

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